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August 2023

August 31, 2023

島薗進、他『政治と宗教』

HMVネット購入。2023年6月25日注文。

書名:政治と宗教—統一教会問題と危機に直面する公共空間
編者:島薗進
著者:島薗進、中野昌宏、中野毅(ナカノツヨシ)、伊達聖伸(ダテキヨノブ)、佐藤清子(サトウセイコ)
出版:岩波新書(2023年1月第1刷)

《目次》

序章 公共空間における宗教の位置………島薗 進

1 統一教会をめぐる「政治と宗教」問題
/安倍元首相殺害犯と統一教会/統一教会と政治家の関係/

2 公共空間に関与する宗教
/公共空間における宗教の政治関与/靖国神社公式参拝の問題/国家神道をめぐる政教分離/創価学会問題をめぐる政教分離/

3 危機に直面する公共空間
/政治家・政治集団を利用する教団/統一教会と政治家・政治集団のもたれ合い/世界的な視野を含めて捉える/

第1章 統一教会による被害とそれを産んだ要因………島薗 進

1 霊感商法と統一教会の教説
/長期にわたる統一教会の人権侵害/霊感商法に駆り立てられる日々/堕落論と「祝福」の教え/「韓日祝福」に見る「祝福」の危うさ/「万物復帰」と「蕩減」/

2 新宗教の歴史のなかで捉える
/現世否定的な教えと現世離脱的な信仰形態/隔離型の教団と外部社会との葛藤/オウム真理教の破綻と統一教会の持続/

3 社会からの批判の高まりと反撃
/霊感商法から「先祖解怨」へ/裁判で違法性が示されるまでの時間/統一教会の批判者への攻撃/『文藝春秋』の内部告発記事/副島襲撃事件と岸信介の文鮮明支持表明/

4 取り締まりが行われなかった背景事情
/赤報隊事件をめぐって/1993年の警察の捜査の可能性/1995年の警察の捜査の可能性/

おわりに
/政治と宗教の歪んだ関係と自由の抑圧/「政治と宗教」の歴史への新たな視点/

第2章 統一教会と政府・自民党の癒着………中野昌宏

/凶弾に斃れた安倍元首相/
/
{・・・さらに、この凶行の直接のきっかけとなったのは、統一教会関連団体への安倍のビデオメッセージを山上容疑者が見たことであると今では報じられている。2021年9月12日、安倍晋三元自民党総裁・首相は「天宙平和連合(UPF)」のイベント「神統一韓国のためのTHINK TANK2022 希望前進大会」において、トランプ前アメリカ大統領に続いてビデオメッセージで登壇し、以下のような祝辞を述べたのだった。
------ご出席の皆さま、日本国、前内閣総理大臣の安倍晋三です。 UPFの主催のもと、よりよい世界実現のための対話と諸問題の平和的解決のために、およそ150カ国の国家首脳、国会議員、宗教指導者が集う「希望前進大会」で、世界平和を共に牽引してきた盟友のトランプ大統領とともに、演説する機会を頂いたことを光栄に思います。特に、このたび出帆した「THINK TANK2022」の果たす役割は、大きなものがあると期待しております。今日に至るまでUPFとともに、世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた、韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します。------
UPFとは、統一教会の教祖である文鮮明(ムン・ソンミョン)と、その妻で統一教会総裁の韓鶴子が2005年にニューヨークで創設したNGOであり、統一教会のいわゆる「友好団体」である。
安倍晋三のこのビデオメッセージは、安倍本人が統一教会のスタジオに実際に出向き、あたかもイベントに登壇しているかのような演出で撮影されたものである・・・。このように手の込んだ祝辞を述べ、イベントに協力しているということは、彼は統一教会の活動を公に是認していると見るほかはない。あまつさえ安倍はこのメッセージの中で、「UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を強調する点を、高く評価いたします」と発言した。まさに教団に家庭を破壊された山上容疑者が、このビデオを目にしたのである。彼の起こした行動が肯定できないものだとはいえ、この瞬間の彼の胸中は、想像に難くない。
われわれ一般国民にとっても、長年霊感商法などの違法行為等によって「反社会的」と指摘される統一教会に対して、日本国・全内閣総理大臣としてお墨付きを与えるなどということはあってはならない事態である。しかしまた、それ以上に驚くべき、かつ不気味なことは、大手新聞・テレビ等がこの事態を全く報じなかったことである。・・・}
/通奏低音としての反響イデオロギーー勝共連合以前の国際的文脈/
/本栖湖会議と国際勝共連合/
/日本政界への食い込み/
/東西冷戦の終結—「反共」の無意味化/
/安倍晋三の台頭/
/第二次安倍政権以降/
/何が問題なのか—人権を蔑ろにする思想・教義こそ問題/

第3章 自公連立政権と創価学会………中野 毅

はじめに

1 創価学会の政治参加のプロセス
//初期の地方議会と参議院中心時代—創価学会の政治活動として/宗教政党結成による衆議院進出—池田時代(1)/国民政党への転換—池田時代(2)/

2 政権参加—非自民連立政権下の小選挙区制導入、そして自公連立へ
//自公連立政権の成立/

3 何故、自民党との連携か、また継続するのか
/連立以前の自民党との関係/支持層の社会的属性/小選挙区制への対応/

4 自公連立による利点と代償
/政権参画の利点/政権参画の代償/

おわりに―今後の課題と公共空間への参与のあり方

第4章 フランスのライシテとセクト規制………伊達聖伸

/
/統一教会問題からはじまったフランスの反セクト運動/
/1970-80年代の統一教会とフランス政界/
/ヴィヴィアン報告書/
/政府主導の反セクト闘争へ―ギュイヤール報告書/
/反セクト法の制定—反セクトキャンペーンの成果か限界か/
/MILSからMIVILUDESへ/
/記号と行為—セクトからイスラームのヴェールへ?/
/政治に浸透する宗教の不在?/
/治安上の危機と健康上の危機/

第5章 アメリカ――政教分離国家と宗教的市民………佐藤清子

序—政教分離国家、宗教的市民、多様性

1 アメリカの政教分離の基本
/憲法修正第一条の制定と政教分離/20世紀半ばの厳格分離/アメリカの対カルト法制/宗教二世の問題/

2 政治家の宗教とアメリカ政治
/連邦議員の宗教/大統領の宗教/

3 宗教的価値観を背景にした市民の運動
/宗教が支えた市民の運動/二極化するアメリカと宗教/宗教の自由の政治/

結論

終章 統一教会問題と公共空間の危機………島薗 進

1 統一教会の「政治と宗教」問題
/はじめに/統一教会の政治関与の段階区分/統一教会の政治関与の力点の変化/統一教会の政治関与の二側面/

2 宗教勢力による現代政治への関与
/創価学会の政治関与への批判/相互の個別利益に基づく連携/右派的理念や政策課題による連携/日本会議とその右派的理念や政策課題/
{このように(統一教会勝共連合の)右派的な理念やアジェンダが自民党、とりわけ自民党の右派勢力と一致しているという特徴は、神道政治連盟や日本会議と重なり合っている・・・。日本会議は右派系の宗教団体が集まって1974年に設立された「日本を守る会」と、財界、政界、学会、宗教界などの代表が結集して1981年に設立された「日本を守る国民会議」の二つの団体が合流する形で1997年に設立された。この日本会議には神社本庁が深く関わっているが、その他にも新宗教系の団体が多く関わっている。解脱会、国柱会、霊友会、祟教真光、モラロジー研究所、倫理研究所、キリストの幕屋、仏所護念会、念法真教、新生佛教教団、オイスカ・インターナショナル、三五(あなない)教等である。日本会議設立の時、日本会議国会議員懇談会も設立されている。2007年には衆参両院で225人を数えたが、2016年時点では280人前後だという・・・。・・・}
/神道政治連盟の理念と政策課題/自民党憲法改正草案と右派宗教団体/

3 「政治と宗教」問題の展開と公共空間の新たな危機
/戦後の政教分離に対する揺り戻し/日本政府における宗教の影響の増大/政党・政治家と特定宗教教団の利益協同/民主主義への脅威と公共空間の危機/

4 公共空間における宗教の未来へ
/国際的な公共宗教的活動/国内での公共宗教的活動/

おわりに


あとがき

 

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August 25, 2023

鴨長明『方丈記』

この本は1981-2年頃、名古屋の書店で購入したものと思われます。


書名:方丈記
著者:鴨長明(かものながあきら)
訳注:安良岡康作
出版:講談社学術文庫


《目次》


まえがき
凡例


1 行く河の流れは絶えずして―人と栖(すみか)との無常―


2 予、ものの心を知れりしより―安元の大火―


3 また、治承四年卯月のころ―治承の辻風―


4 また、治承四年水無月のころ―福原への遷都―


5 また、養和のころとか、久しくなりて―養和の飢饉―


6 また、同じころかとよ、おびたたしく大地震なる事―元暦の地震―


7 すべて、世の中のありにくく―世の中に生活する悩み―


8 わが身、父方の祖母の家を伝へて―出家・遁世と方丈の庵―


9 いま、日野山の奥に跡を隠して後―日野山の草庵生活の種々相―


10 おほかた、この所に住み始めし時は―草庵生活の反省―


11 それ、三界は、ただ、心一つなり―草庵生活における閑居の気味―


12 そもそも、一期の月影傾きて―草庵生活の否定―


『方丈記』概説(安良岡康作)

1 鴨長明
2 『方丈記』の構造
3 『方丈記』の価値
4 『方丈記』の文芸史的意義


『方丈記』末尾の注釈補遺

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August 24, 2023

司馬遷『史記世家(上)』

この本は1985-86年に大阪にあった旭屋書店で購入したようです。


書名:史記世家(上)
著者:司馬遷
訳者:小川環樹、今鷹真、福島吉彦
出版:岩波文庫(1980年5月第1刷)


《目次》


呉太伯世家 第一


斉太公世家 第二


魯周公世家 第三


燕召公世家 第四


管蔡世家 第五


陳・杞世家 第六


衛康叔世家 第七


宋微子世家 第八


晋世家 第九


〔地図〕

春秋時代要図
戦国時代要図

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August 16, 2023

新藤宗幸『官僚制と公文書』

HMVネット購入。2023年4月14日注文。

書名:官僚制と公文書 ―改竄、捏造、忖度の背景
著者:新藤宗幸
出版:ちくま新書(2019年5月第1刷)

《目次》

序章 官僚制を揺るがす公文書管理

/官僚機構の「危機感」/前代未聞の決裁文書の改竄/加計学園をめぐる行政文書の真贋争い/官僚制における文書主義の闇/適正さを問われた公文書管理/「モリ・カケ」疑惑が教えるもの/本書の目的と構成/

第1章 官僚制の組織構造と行動

1 戦後民主改革と調和しているのか
/制度外形の民主化/戦前期を引き継ぐ組織と人事/

2 官僚制組織に内在する非民主的構造
/「入口」選別とキャリア組・ノンキャリア組/「規則革新派」と「規則保守派」/

3 組織における順位の権限と責任
/異例な行政手続法の規定/行政組織法令と行政作用法令の齟齬/
{・・・戦前期においては、勅令である各省官制通則が、今日の国家行政組織法に相当する官庁組織の基準法規であり、これを基本として各省官制なる勅令によって設置の法的根拠と内部組織、それぞれの所掌事務が定められていた。
天皇主権から国民主権への転換をはたした戦後民主改革は、国会制定法による行政組織の設置を当然の前提とした。だが、日本の占領統治は間接統治だ。ごく一部の戦争遂行に直接かかわった官庁(陸軍省、海軍省、大東亜省など)は、敗戦とともに解体されたが、基幹の省は存続した(ただし、内務省は戦後民主改革が一段落した1947年12月に解体)。つまり、戦後初期の官庁の大半は、各省官制にもとづき業務を遂行したのだ。そして国家行政組織法の制定にあわせて、〇〇省官制をもとに〇〇省設置法案を作成し国会に提出した。この作業の特徴は漢字・カタカナ混じりの条文を基本から見直すものではなく、カタカナを平仮名に改めたにすぎない。
この結果、「〇〇に関すること」なる所掌事務規程が生き残っただけでなく、この所掌事務に対応する行政作用法(公権力行使の根拠法)が存在しないという「重大な欠陥」が放置されたのだ。天皇主権のもとでは官庁は天皇に仕える官吏集団だから、すべての所掌事務が議会制定の行政作用法に根拠づけられる必要はない。所掌事務規程(行政組織法としての〇〇省官制)のみで公権力を行使できる。だが、国民主権のもとでは、本来、行政作用法があって初めて、それをどの機関に分掌させるかが決定され、さらに組織内のどの単位に分掌させるかが、決定されなくてはならない。
ところが、行政組織設置の法定主義は、さきのように「綱渡り」のような作業で「順守」されたものの、行政組織法令と行政作用法令の整合性は、省みられなかった。国会の審議も、「官庁設置に法律の枠をはめた」で満足し、民主主義にもとづく行政とはいかにあるべきかは、まったく視野に入れられなかった。2001年の行政改革においても、各省設置法令と行政作用法令との整合性が問われることはなかった。今日なお、「〇〇に関すること」なる所掌事務に対応した行政組織法が存在しないという問題状況を残している。
戦前期体制では、さきに述べたように、主権は天皇にあるから、行政作用法が存在していなくとも所掌事務規程のみで国民に公権力を行使することができる。また組織単位の長の責任と権限があいまいであっても問題は生じない。
だが、以上のような行政組織からは、一つには「無定量」な行政権限の増殖が起こりうる。くわえて、行政組織における職位の権限と責任が不明確であるとき、「無責任」行政に通じる。いずれも、民主主義政治体制下の行政の重要な欠陥といわねばならない。}
/薬害エイズ裁判の教えるもの/
{・・・行政官の作為・不作為が国家公務員法の懲戒処分のみではなく刑事責任を問われうるとしたことは評価されてよい。しかし、奇しくも検察側が生物製剤課長の職務権限に明文規定は存在しないと認めた上で、「総括整理」の怠りを罪としたのは、薬害エイズ事件への社会的批判を前にした苦肉の策といってよいのではないか。この裁判が教えているのは、組織の職位ごとの権限と責任が不明確であるならば、行政官そして行政組織の行動に緊張感が生まれ難いことである。「一罰百戒」的に刑事責任を科すことで問題を処理することではなく、組織構造そのものの改革が必要であることだ。
/「棚ざらし」の果てに廃止された職階法/
{・・・ようするに、行政作用法と行政組織法の齟齬、職位の権限と責任の不明な組織構造は、官僚制組織の「独善的」行動に縛りをかけることは難しい。近年、とみに指摘されている「官僚制の劣化」とは、現象的にはそのとおりだとしても、官僚制の構造に歴史的に胚胎してきた欠陥が噴出したものといってよいだろう。}
/「大部屋主義」と不完全解/

4 官僚の意思決定と文書主義
/文書主義の対外的機能/意思決定行動にともなう大量の文書/法律案の作成手続き/前段での審議会、有識者会議での議論/どこまで「公文書」と認識されているのか/許認可とその背後での審議/最終決定の重視・決定過程の軽視/なぜ、決定過程の文書が軽視されるのか/
{・・・権限行使にとって最終的決裁文書以外は不要との認識があるのは否めない。
・・・官僚組織の基底にエリート主義の裏返しの秘密主義が支配し、外部に向けて組織内の協議事項や事前の工作を明らかにする必要はないとの意識が色濃いことを指摘できよう。このことをもう少し組織構造に照らしていうならば、繰り返し述べたように、日本の官僚制が職位の権限と責任を明確にした組織となっていないことが大きく影響していよう。
官庁の文書管理規程・管理規則や専決規程は、決裁権限者を定めている。だが、事案の決定にいたるまでには、組織単位ないばかりか関係する組織単位との間で折衝や根回しがおこなわれ、一定の合意が得られる状況があらかじめ作られる。それは組織単位の長がおこなうとはかぎらない。組織内の係・係員には事務分担が定められているが、それは権限と責任を明示したものではない。したがって、個々の事案の基礎的な検討が組織単位の長から命じられた職員をリーダーとしておこなわれる。それをもとにして組織単位の長がくわわった会議において一定の方向が出される。他の部局との折衝・根回しについても同様である。しかも、こうした任に当たるのは、いわゆるキャリア組官僚である。
彼らは基本的には昇進レースの競争相手なのだが、部局を超えた一体感は強い。そのうえでの競争であるから、相手側の顔を立てながら、つまりは「円満」を装いつつ、いかに自らの主張を合意事項に組み入れていくかに腐心する。逆にいえば、「変人」「奇人」「頑固」などという評価が生れることを極力警戒する。
日本の官庁において「属人主義」は一般的にいうかぎり排されている。とはいえ、こうした合意調達方法が主流であるとき、個々の協議などの文書を最終決裁文書とともに保存する指向は希薄とならざるを得ない。
くわえて、自民党一党優位体制のもとでの与党事前審査制は、実質的に国会での委員会審議の先取りだ。このこと自体、民主主義政治体制にとって重大問題だが、官僚制組織の側からみれば、事案の決定にいたる理由は十分に説明し、さらに議員側の要望や要求を入れた修正を施したものであるから、事案の決定にいたる事前の文書を保存しておく必要は希薄なのだ。それが事業の決定の各段階における文書の軽視という習性として、脈々と生き続けているといってよいだろう。}

5 官僚制にたいする民主統制と歴史への責任
/民主政治と歴史への責任/問われる民主政治への感性/

第2章 官僚制の意思決定と情報公開法・公文書管理法

1 情報公開法の制定と論点
/市民運動の問題提起と自治体が先導した情報公開法制/村山富市・自社さ連立政権による法制化の始動/行政情報公開部会のメンバーと議論の焦点/「アカウンタビリティ」による「知る権利」の代替/適用対象情報とは/「組織共用文書」の範疇/施行令の公開対象は「決裁文書」に限定か/

2 遅れてきた公文書管理法の制定
/公文書管理法の制定/「車の両輪」というが、轍が問われる/保存期間基準/保存期間と一年未満文書/ガイドラインの改訂と独立公文書管理監/

3 現用文書と非現用文書
/外務省機密漏洩事件と文書の開示請求/レコード・スケジュール/レコード・スケジュールが見落としているもの/

4 情報公開法・公文書管理法の精神と真逆な特定秘密保護法
/文書管理規則における秘密文書等の管理/学問・研究、報道の自由の危機は民主政治の危機/

第3章 政権主導の意思決定システムと官僚制

1 安倍政権の「官から政」とは
/民主党政権の「失敗」と安倍晋三政権の再登場/国家主義と新自由主義を基軸とする「官から政へ」/

2 政権主導の装置としての内閣官房強化と有識者会議
/国家安全保障会議と国家安全保障局の設置/安全保障体制と安保法制懇談会/「働き方改革実現会議」と働き方改革一括法/拙速きわまる外国人労働者の導入/官邸への官僚の同調/

3 安倍政権による公務員制度改革—内閣人事局の設置
/政治主導と公務員制度改革の始動/
{・・・その後、2007年の第一次安倍政権のもとで、社会的批判の強い「天下り」規制に関する国家公務員法の改正が実現した。首相はきびしい「天下り規制」と語ったが、「天下り」に対象を限定した国家公務員法の改正は、大衆迎合主義の産物といってよい。「大綱」にもとづき人事院の「天下り」規制を廃止する一方で、官庁による斡旋も禁止した。基本的に「再就職」は大臣への届出制となった。
そうだからこそというべきか、2017年の文部科学省をはじめとした「違法な」天下り事件にみえるように、改正法は「抜け穴」だらけだ。しかも、「天下り規制」への大衆の支持を得ようとしたのか、官製ハローワークともいえる官民人材交流センターを内閣府に設けた。センターは民間からの人材募集情報をあつめ、定年後に民間で働こうとする官僚とマッチングさせるものだ。だが、官民人材交流センターはまったく機能していない。
官庁は歴史的にいわゆる外郭団体や業務上密接な関係をもつ企業を多数かかえている。官庁にとって、官民人材交流センターは初めから「無用の長物」なのだ。}
/公務員制度改革基本法の制定、そして内閣人事局の設置/「官邸人事局」のもたらすもの/
{・・・約15年の時間をかけて議論された内閣による国家公務員の一元的管理が、内閣人事管理局の設置として収束したことには、多様な評価が存在しよう。・・・
・・・しかし、制度論としての評価に加えて、というよりはむしろ、制度の動態に注目しておかねばなるまい。この組織名称を「内閣人事局」とするのは、法理的には当然だが、政治的文脈を加味して言えば「官邸人事局」であって、合議体としての執政部である内閣に統括された人事局ではない。しかも、内閣人事局の作成する官僚の業績調書や適格性審査書、幹部候補者名簿などの妥当性が閣議で議論されるわけではない。官房長官の内閣内における権力が「絶大」とは、たんにマスコミが報道するだけでなく、キャリア組官僚の語るところだ。ようするに、内閣人事局による行政幹部の任免は、政権中枢なる「奥の院」の「秘事」なのだ。任免に至る過程が高度に閉ざされている限り、議院内閣制に基づく内閣統治の装置というよりは、官邸「独裁」の装置に近いといえよう。
こうした、「官邸人事局」といってもよい内閣人事局の設置によって、かつて「官庁の自治」ともいわれたキャリア組官僚の昇任ルートは、根底から覆された。官庁の規模にもよるが、15,16人程度から25人程度の国家公務員試験Ⅰ種試験合格の幹部候補生たちは、昇任の過程において次第に篩にかけられ、官房長ー局長ー筆頭局長ー事務次官というキャリアパスを歩んできた。筆頭局長や次官の内部人事に大物OB(次官経験者)が介入することはあったが、互いに競争してきた同期生たちが、特定の人物の昇任にそれなりに「得心」「納得」してきたのも事実だ。しかも、篩にかけられ局長・次官レースから外れた者は、官庁から放逐されるわけではない。官庁外延組織にそれ相当の職の面倒見がなされた。それは「官庁コミュニティ」の一体性と強靭さを維持する術(すべ)であった。
しかし、「官庁人事局」が猛威を振るうならば、自らの昇進を追求するキャリア官僚が、官邸の政治的意思に忠実たろうとする。それは個別具体的に明確な指示がないとしても、いわゆる「忖度」なる行動となってあらわれる。しかも、それは官邸中枢に「側近」として抱えられることを個人的に希求するという次元ではなく、政策・事業の立案に際して官邸の政治的意思に適合するように根拠(エビデンス)を「加工」―率直な言い方をすれば「捏造」―することになる。なぜならば、官僚制幹部の評価は、政権の意思の実現に向けて下僚や組織単位を管理し得ているかにかかるからだ。こうして、官僚制組織の行動から合理性が失われていくことになる。これは日本の行政にとって危機的な状況といわねばなるまい。
ところで、内閣人事局が直接任免権を持つのは、600人程度の幹部官僚だが、それは一つの象徴的行為であって、官僚機構全体をみるならば、その影響はそこにとどまらない。国家公務員の総定員が抑制される中で、内閣府が2001年の行政改革で新設された。内閣人事局が直接対象とする官僚だけでなく、各省から内閣府への異動人事がおこなわれるようになっている。}

4 政権の官僚制の増殖
/担当大臣の「濫設」/政権主導に応えられない従前の内閣官房/安倍政権による内閣官房の組織拡大/内閣府の重要政策会議/首相の官僚機構/
{・・・とはいえ、「首相権力」の強化をひたすら追求する安倍政権が、与野党を超えた議員立法に従順に従っているとはいえないであろう。むしろ、そうした国会制定法を奇貨として、さきにみた内閣官房の強化と並んで各省官僚制を越える内閣(首相)の官僚機構を確立しようとしているとみるべきではないか。そもそも、議員立法は議員の自由意思で提出できるのではなく、衆議院の場合所属政党の機関承認を必要としている。議員立法の提出に官邸ないし自民党最高幹部の「工作」がないとは言い切れないのだ。
しかも、官房副長官を局長とする内閣人事局の人事権限は、内閣府の枢要な官僚である政策統括官にもおよぶ。実際、政策統括官に首相サイドからみて「有能」と思える各省官僚を任命しており、また逆に、省の事務次官職に政策統括官を送り込むといった人事が目立ってきており、伝統的に「官庁の自治」とされてきた官僚のキャリアパスは、「破壊」されつつあるといってもよい。}

5 進行する官僚・官僚機構の劣化
/政権の官僚機構への過剰同調/政権に従属する法の解釈と運用/官僚機構の自負・矜持を捨て去った種子法廃止/
{・・・働き方改革一括法、出入国管理法をめぐる議論や森友学園・加計学園疑惑といった重要政治問題が政界を支配するなかで大きなニュースとはならなかったが、2018年4月、種子法は全面的に廃止された。種子法の廃止は衆参両院あわせてわずか12時間の審議で国会を通過・可決されている。国会審議の低調さは議員の資質に加えて「安倍一強」なる状況の所産であろう。だが、それ以前に農林水産省官僚機構さらには環境省官僚機構から、まったくといってよいほど異論が提起されなかったことを、どのように考えるべきか。
すでに20年以上前から日本の野菜の種子市場は、世界的な種子企業の支配を受けてきた。「種のできない野菜」「特定の農薬しか効かない野菜」が、農業生産者の話題とされてきた。いまや、モンサント・バイエル、ダウ・デュポンといった多国籍企業に種子市場は押さえられ、日本の野菜の90パーセントがこれら企業の支配下にあるとされる。稲、大豆、麦の種子は野菜の七倍から八倍の市場規模がある(「東京新聞」2018年12月22日朝刊、「種子法廃止を問い直す」)。多国籍種子企業にとって日本の種子市場の門戸開放は重要な関心事だが、事は食糧安全保障の根幹である。
農水省官僚機構は、当然、こうした実態を知っている。しかも、主食であるコメの生産を安定的におこなうために、「公共の種子」の開発と廉価での生産者への提供がもつメリットを分かっているはずである。環境省官僚機構も種子生産にかかわる多国籍企業が、遺伝子組み換えやゲノム(全遺伝情報)編集による種子開発をおこなっており、その人体や自然環境におよぼす影響を熟知していよう。
種子法廃止の背景にあるものが、安倍政権のアメリカ・トランプ政権との軍事のみならず経済における協調体制指向にあるのはいうまでもない。トランプ政権は、自国産業の再興を図るとして日本に多額におよぶ高性能な武器の購入を求めてきたが、種子や種苗の輸出のために、「非関税障壁」である種子法の廃止を求めたのであり、これに政権が諾々と従っているといわざるをえない。だが、法令上も技術上も農産物、それも主食の安定的供給を追求してきた農水官僚の気概と知識はどこにいったのか。官僚機構の全力をあげて主食の確保と安全に向けて行動すべきなのだ。ところが、農水省官僚と環境省官僚は沈黙し種子法の廃止を受け入れた。・・・}
/情報公開法・公文書管理法の背理/

終章 壊れる官僚制をどうするか

1 「政権主導」の功罪
/なぜ、「政権主導」を必要としたのか/橋本政権の行政改革会議「最終報告」/制度としての正当性/制度の「暴走」/
{・・・ところで、安倍政権の内閣官房・内閣府の組織・機能については第三章で論じた。中曾根政権による右の内閣官房の再編以降に行政改革会議の最終報告にもとづく2001年行政改革が実施されているが、安倍政権による国家安全保障会議の設置をはじめとする内閣官房・内閣府の強化の「原型」が、中曾根政権による執政部政治の試みにあるといえよう。安倍政権は内閣官房に内閣人事局を設置し、官僚制幹部の人事権を掌握した。それゆえに、まさに「首相の官僚制」が構築されているのである。
一般論として言えば、こうした執政部の強化は、大所高所から政治の基本方針を示し、スピーディーな政治・行政の実行として評価し得るであろうし、実際にも評価されてきた。だが、こうした制度的観点からの評価にまして注目しておかねばならないのは、この「首相の官僚制」に君臨するリーダーの政治指向であり、政治的資質だ。
「政権主導」「政治主導」の必要が政治の世界や学問の分野において盛んに議論された状況下においては、「政権主導」のトップリーダーたる首相ならびに執政部を構成する政治家の行為規範、官僚制との関係性についての議論は、本格的に論じられなかった。それだけ、「小さい利益」の実現をもって政治とする日本型政治システムへの危機感が強く、「政治主導」が緊急の課題として認識されていたことの裏返しでもあったろう。けれども、この議論を抜きにするとき、「政権主導」の制度的正当性は否定され、「政権主導」は政権の「暴走」へと変容しよう。
「政権主導」を担うトップリーダーに何よりも求められるのは、民主主義政治体制を名実ともに順守する規範意識だ。「国権の最高機関」たる国会(与党にではない)に表出される多様な価値そして利害を俯瞰し、政治の基本方向を明示することであって、政治と行政の決定核を閉鎖的組織に集中させることではない。政権主導の装置は、多様な利益を的確に調整するためにあるのであって、トップリーダーのイデオロギッシュな政治指向志向を政策化するためにあるのではない。
しかし、安倍政権の六年には、民主主義政治体制を順守しようとする規範意識を見出すことはできない。復古主義ともいえようが国家主義政治を指向し、安保法制の制定をはじめとした、「国家」の改造を実現しようとするものだ。他方において新自由主義というよりは市場原理主義を振り回し、資源配分の社会的公平・公正についての認識などまったく視野の片隅にもない。社会的に国家主義、新自由主義への同調が存在することは否定できないが、民主主義政治体制への定見なくそれらを増幅させることは、一国の政治リーダーとしての資質に欠けると言わざるを得ない。
民主主義政治体制を順守しようとする規範意識の欠如は、官僚・官僚機構との関係においても現れている。「公務員は国民全体への奉仕者」といった、ある意味でステレオタイプ化した議論をしようとは思っていない。「政権主導」において政権が最も重視せねばならないのは、先に述べた民主主義政治体制を重視した上での政権の政策指向を、官僚機構の有する専門的知識・技術に基づき具体化させることだ。言い換えれば、分立する官僚機構の密室における裁量行為としての立法・政策実施を排除し、政治を「復権」させることだ。もちろん、このためには、緊張感のある政権と官僚機構との関係を必要とする。つまりは、官僚機構を強権的に統制することでもなければ、民主党政権が「失敗」した官僚機構の排除でもない。官僚機構に事案の解決のための選択肢を作成させ、政治的代表機関としての責任をもって解決策を決定することだ。
ところが、安倍政権は、内閣人事局なる機関をきわめて政治的に操作している。第三章で述べたが、ここにおける官僚制幹部の人事は、まさに密室の作業である。そこでは官僚としてのキャリアや能力も審査対象だろうが、政権への親和性・同調性の程度が人事リスト作成の重要判断基準とされているのは、もはや否定しようがないといってよかろう。官僚制幹部をこのようにして任用すれば、政権のイデオロギッシュな政策が容易に実現すると考えられているのだろうが、それは「宮廷政治」「側用人政治」なのだ。こうした事実は「政権主導」の暴走だと言ってよい。だからこそ、これは安倍晋三なる政治家の資質と密接に関係するが、森友学園・加計学園疑惑という権力の「私物化」問題が生まれるのだ。
このようにみるならば、いかにして「政権主導」の暴走を正し、「政治主導」の政治的正当性を実現するかは、現代日本政治の喫緊の課題だといえよう。}

2 「政治主導」の意義を取り戻す
/内閣人事局と官僚制の関係/中央行政機構の縮図のような内閣府の解体/
{・・・付言すれば、内閣に限らず省も含めて「官房」なる組織名称は廃止されるべきであろう。明治初期におけるドイツ行政法学の輸入のなせるところだが、「官房」(kammer)は絶対主義皇帝に忠誠を尽くす皇帝官僚の役所を意味する。絶対主義天皇制時代には、それでよかったとも言えようが、こうした事大主義的組織名称は現行憲法体制に相応しいとは言えない。内閣官房は「首相府」ないし「内閣府」であってよい。同時に、各省の大臣官房は「総務局」で十分だろう。・・・}
/政務三役は、なんのために存在するのか/機動的な省庁編成の必要性/

3 官僚制は安倍政治によって壊れたのか
/信じ難いほどの官僚制の劣化/特権意識のはびこりと陰り/
{第一章でみたように、戦後日本の官僚制は天皇主権下の官僚制構造を、外見的姿を変えて引き継ぐものだった。「官吏」から「公務員」への法的名称の変更はあっても、組織内部においては官の秩序は身分制として事実上残された。「入口選別」といわれる採用試験の区分は、公務員の昇進可能性を決定づけた。しかも、組織は「閉鎖系」であり、民間との人事交流は無いのに等しい。幹部候補生として採用された職員に特権意識を植え付ける。
こうして、戦前期を引き継ぐ「官の支配」は、非民主的な行政組織とならざるを得ないが、それは中央省庁内部にとどまらない。中央省庁の幹部候補生であるキャリア組官僚は、30歳代の若さで府県庁の枢要な課長職に派遣される。課長補佐級ともなれば部長職、さらに課長職で副知事として派遣される(法的にいえば、「派遣」ではない。一般職の場合はいったん退職し、府県人事委員会の審査を経て任用される。副知事の場合はいったん退職し、府県議会の同意を得て任用される。だが、実態は「派遣」と言った方が妥当だ)。
こうした人事は「地域の実態を学ぶ」といった言葉で「正当化」されてきたが、兄弟の世代どころか父母の世代に指図する職—しかも、部下の大半は定年までにその職に昇進することはない―には、それなりに「苦労」があることも事実だろうが、エリートとしての心的態度と行動を植え付けていくことになろう。この自治体との間の人事は、今日なお継続している。
それでも、戦後復興から高度経済成長期においては、エリート官僚のみならずノンキャリア組と「蔑称」された職員も含めて、国の再建さらに発展=近代化へ向けて目標が共有されていた。「〇〇省一家」とされる閉鎖的組織には、「身分」を超えた一体感が存在し、幹部の識見や交渉力についての評価が存在していたといってよい。この限りにおいて、組織内では鼻持ちならない「特権的」エリートとは見なされていなかったのだ。
こうした組織に変化が生れるのは、1980年代に入ってからだといえよう。すでに、この段階になると官僚制の行動を駆り立てた近代化は達成された。「護送船団方式」といわれた官僚機構主導の業界との利害共同体は、国際的な批判の的とされた。銀行・証券業ひとつを取り上げても、官僚機構が微に入り細を穿った規制=保護をなしうる状況ではなくなった。自治体の政治と行政にも「唯唯諾々」と中央官僚に従う指向は薄れていった。そして何よりも、財政の逼迫が深刻化し財政再建をいかに進めるかが、政治の重要なアジェンダとされる。
こうした当時の状況を細かく論じることはここでの課題でないが、政治は官僚制組織に新たなミッションを設定しなかった。政治・政権は、ひたすら財政の再建を「民間活力の活用」=新自由主義に求めていく。中曾根政権は許認可等の事務を官僚機構の外延に公益法人を濫設して「下請け」させていったが、それはより大規模に国立病院・療養所、国立大学をも独立行政法人、国立大学法人として「外部化」する動きとなって表れている。さらには、安倍政治の強調する「岩盤規制」の撤廃へとつながっている。
官僚制組織が組織のミッションを見失っていることに加えて、国家公務員の総定員がきびしく抑制され、さらに事業の「外部化」が進行した。実務を遂行するといっても、それは主として指導・指示に依存している。キャリア組官僚の「本領」が政策・事業の企画立案だといったところで、「現場」を失い、あるいは「現場」が相対的に「自立」の度合いを強める状況では、そもそも有意な政策・事業の立案や実施など、できるはずがないのだ。
しかも、現在の事務次官、局長、課長といった官僚制幹部は、すでに60歳代初頭から50歳代であり、公害問題、ベトナム戦争、大学と学問のあり方などが厳しく問われた時代を知らない。共通一次試験、センター試験に象徴される偏差値による大学入試競争の中で育った学業上の優等生たちだ。社会的公正や平等についての鋭い感性が培われてきたとは言えない。だが社会問題への「視野狭窄」と組織的ミッションに確信を持てない状況下においても、官僚人事の差別構造は存続している。
こうなれば、キャリア組官僚の特権意識だけが増殖していく。その結果、自己の「保身」「栄達」が関心の的とされ、下僚の苦悩を理解できずに作業を命じる。ひいては、それが国民生活を脅かすことなど、関心の枠外となる。このようにみてくるならば、官僚制組織のまさに構造改革が問われているという以外にない。}
/身分的人事制度を廃止する/内閣一括採用と省内人事のあり方/顔のみえる行政組織へ/

4 公文書管理で公正な政治と行政を実現する
/公文書に包括的に網をかけた定義/公文書管理のための行政システム/
厚生労働省による毎月勤労統計や賃金構造基本統計調査のデタラメさばかりか、政府の他の基幹統計にも疑問の眼が向けられている。歴史にイフを持ち込むのではなく、現状改革の示唆としていうのだが、戦後民主化過程の1947年に設けられた独立行政委員会としての統計委員会が存続していたならば、これほど杜撰な統計行政だったであろうか。
多大な惨禍をもたらしたアジア・太平洋戦争の重要な要因の一つが、政府・軍部による科学的根拠のない政治的かつ軍事的プロパガンダにも等しい統計にあったとの反省にもとづき、統計委員会が作られた。そして大内兵衛など進歩派経済・統計学者をトップに据えた委員会によって統計行政の近代化=民主化が推し進められた。しかし、統計委員会は日本独立とともに内閣統轄による行政の一元化を理由として、他の行政委員会と一緒くたにして廃止され、総理府所管の統計審議会とされた。
現在いう統計委員会は総務省の付属機関にすぎない。統計法に違反した厚労省による毎月勤労統計調査は、2004年から続いてきたとされる。その具体的な理由はいずれ明らかになるであろうが、基本としていえるのは、統計行政という科学的判断を必要とし、かつ政治に中立でなければならない業務が、内閣統制下の行政機関にゆだねられ、第三者の厳しい監視の眼が届かないならば、官僚制組織の内部事情によって方法等に手が加えられるのも当然であろう。
このように見るならば、カテゴリーとして区分した公文書全体について、各省の公文書管理に監督権限をもつ内閣から相対的に独立した行政機関の設置を必要としよう。・・・}
/「内閣の所轄の下」の意味/国会の責任が問われる/

あとがき
参考文献

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August 09, 2023

 杉田弘毅『アメリカの制裁外交』

HMVネット購入(すぐ後に購入したのを忘れてアマゾンで中古を買うお粗末)。2023年6月25日注文。

著者のアメリカ好きが伝わってくる。実はアメリカ国籍でした、と言われても納得するだろう(笑)。そんなアメリカ崇拝者でも最近のアメリカには不安がいっぱいと感じているようです。特に金融制裁がかなりの傲慢ぶりで孤立を招く恐れがあると。。。

書名:アメリカの制裁外交
著者:杉田弘毅
出版:岩波新書(2020年2月第1刷)

《目次》

はじめに

【第1部 司直の長い腕】

第1章 孟晩舟はなぜ逮捕されたのか

//豪華な保釈生活/米国の威信をかける/米国のスパイがいた/ファーウェイの誤算/国際緊急経済権限法/米金融システムを守る/ブラック・スワン/米中覇権争い/日本の企業も対象に/

第2章 経済制裁とその歴史

//三形態とその効果/安保理制裁の限界/制裁目的の多様化/戦争と経済制裁/世界大戦と禁輸/冷戦下の経済制裁/朝鮮戦争とOFAC/最初のイラン制裁/イラク制裁の失敗/米国の金融制裁は「死刑宣告」/

【第2部 アメリカ制裁の最前線】

第3章 米制裁を変えた9・11――テロ

//異彩放つ財務省/ブラックリスト/八〇対二〇の原則/愛国者法/門戸を開いたSWIFT/スイスの銀行も屈服/消えた名門銀行/安保理財務相会合/

第4章 マカオ発の激震――北朝鮮

//資金洗浄の懸念先/ドル紙幣偽造が発端/二一世紀型の精密兵器/北朝鮮の暴発/地球を一周した北朝鮮マネー/北朝鮮はなぜ核実験をしたのか/米政府内の対立/金正恩も金融制裁対象に/外交の欠落/

第5章 原油輸出をゼロに――イラン

//国民的英雄を殺害/イラン制裁の源/秘密核施設/Uターン決済禁止/徹底的なイラン締め出し/JCPOA/積み残し/トランプの気まぐれ/

第6章 地政学変えたクリミア制裁――ロシア

//困難になった平和条約/クリミアの併合/
{・・・クリミア半島は帝政ロシア時代の19世紀から保養地として知られ、ロシア系住民が60%を占め、ウクライナ人は25%と少数派だった。黒海に突き出ている半島にはロシア黒海艦隊の基地があり、ロシア海軍が地中海に出る戦略的要衝である。もともとロシア共和国領だったが、ソ連共産党第一書記だったニキタ・フルシチョフが1954年にクリミア半島をウクライナ共和国に移管する決定を下した。フルシチョフはウクライナ出身でクリミアは母国へのプレゼントでもあった。・・・}
/エネルギー産業を狙い撃ち/米大統領選への介入/人権違反も対象に/外国の「悪事」を懲罰/議会の縛り/広がる対象、薄れる効果/欧米の溝/

【第3部 制裁の闇】

第7章 巨額の罰金はどこへ

//史上最大の罰金/不明朗な制裁金の基準/政治が金をむしり取る/金の使い道は?/警察官のスマホ購入資金/三重の取り立て/あいまいな基準/外銀が標的に/

第8章 冤罪の恐怖

//あるソマリア移民/証拠がなくとも制裁/「祝福」の代償/疑わしきは罰する/一三年の法廷闘争/名門の上院議員も/慈善団体とテロ/ディリスキング/日本のメガバンクも/送金業務が急減/汝の客の客を知れ/朝令暮改/一般市民が犠牲に/

第9章 米法はなぜ外国を縛るのか

//「国外適用ではない」/国外適用の法理/かつては各国政府が抗議/骨抜きの対抗措置/司法に介入せず/「国際正義」の確立/米国と国際法/米国至上主義/司法の強さ/広がる国外適用/

【第4部 金融制裁乱用のトランプ政権】

第10章 制裁に効果はあるのか

//仕事の半分は制裁/体制転覆を狙う?/貿易不柊衡か覇権争いか/金融制裁は「効く」/「成功」は三六%/短期的な目標は達成/制裁だけでは目的は達成できない/なぜ制裁は効かないのか/被制裁国を支援する国々/米国内に共通する危機感/

第11章 基軸通貨ドルの行方

//通貨主権/ポンドからドルへ/基軸通貨の条件/通貨の番人/あからさまな挑戦/プーチンの執念/INSTEXとCIPS/英中銀総裁の提言/危機感を語る実務家たち/「法外な特権」失う日/

あとがき――覇権の行方

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August 05, 2023

「おつむてんてんクリニック」

レンタルDVD鑑賞記。つまらなかったので途中までしか見なかったが、後で重複しないよう記録しておきます。


タイトル:What About Bob? (1991年)

Director: Frank Oz(監督:フランク・オズ)
Writers: Alvin Sargent, Laura Ziskin, Tom Schulman
Stars:
Bill Murray ... Bob Wiley
Richard Dreyfuss ... Dr. Leo Marvin
Julie Hagerty ... Fay Marvin
Charlie Korsmo ... Siggy Marvin
Kathryn Erbe ... Anna Marvin
Tom Aldredge ... Mr. Guttman
Susan Willis ... Mrs. Guttman
Roger Bowen ... Phil
Fran Brill ... Lily
Brian Reddy ... Carswell Fensterwald
Doris Belack ... Dr. Tomsky
Melinda Mullins ... Marie Grady

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August 04, 2023

石母田正『平家物語 他六篇』

HMVネット購入。2023年4月14日注文。

書名:平家物語 他六篇
著者:石母田正
編者:高橋昌明
出版:岩波文庫(2022年11月第1刷)、『平家物語』は1957年に岩波新書から出版されたものの文庫化。

《目次》

【平家物語】

はじめに

一 運命について

二 『平家物語』の人々

三 『平家物語』の形式

四 合戦記と物語

{・・・しかし読んでわからないものがどうして聴いてわかるはずがあろうか。ところがこの種の文章の作者は、聴衆が聴いて一つ一つの言葉の意味を理解し得ないことを、はじめからよく知っており、計算さえしているのである。聴衆が、全体としてここから都の荒廃と漠然たる悲哀感を感受すれば、この文章の目的は達せられるのであって、ここでの言葉は、それがもつ正確な意味内容を伝えるのではなく、言葉が組合わされて一つの魔術的な作用をする使命をもたされているのであるから、ある意味ではわからない言葉の方が効果的でさえある。・・・}

むすび――『平家物語』とその時代

あとがき

[平氏系図抄]
[附録]『平家物語』を読む人のために――参考文献について

【付 論】

一谷合戦の史料について

預所と目代

「院政期」という時代について

『愚管抄』の面白さ

永積氏の「方丈記と徒然草」を読んで

『中世散文集』について

***********
初出一覧
〔解説〕(髙橋昌明)

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